ほしぶどうDryRaisins

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ほしぶどうDry
~鮮度はそのまま、おいしさ凝縮~
丹波ほっこり農園

ほしぶどうと言えば、多くの方の頭に、黒ずんだ輸入ものの小粒のレーズンが思い浮かぶことだろう。だが、丹波ほっこり農園のほしぶどうはそうした一般のレーズンとはまったく違う。写真でみればおわかりのように、一粒がとても大きく、しかも大粒のブドウは水分をしっとり湛えている。安価に販売されているレーズンはカラッと乾燥しているのが常だが、丹波ほっこり農園のほしぶどうは、表面がネットリしており、生果と乾燥の中間とも言えるような水分の度合いなのだ。

エエもん鑑定会でこのほしぶどうを口にしたとき、審査員の杉本敬三シェフ(新橋「ラ・フィネス」)が、「とてもウェッティでおいしいなあ、僕はこれ、好きです。」と思わず漏らした。そう、ウェット(水気が多いこと)であることが、このほしぶどうの最大の特徴である。

もうひとつ、審査員の山本謙治(農畜産物流通コンサルタント)は、「クセがないなあ」と漏らした。輸入のほしぶどうにある、ブドウが干されて濃縮された強い香りが、このほしぶどうにはない。その代わりに、素直なブドウの香りと味わいが残っている。

「じつはそれがこのほしぶどうの味の重要な部分なのです。本当に申し訳ないのですが、私が、ほしぶどう特有のあの香りが嫌いなのです。そんな私が食べて美味しいと思うほしぶどうを追求した結果が、この商品なのです。」

そう一気に話してくれたのが、丹波ほっこり農園を運営管理している取締役専務の横田将吾さんだ。じつは横田さんの本業は石屋さん。横田石材は、福知山のみならず京都府内でも有力な石材店だ。

その横田さんがなぜ果樹のブドウに手を出したのだろうか。

「私が生まれ育ったのは、大粒のブドウ産地として名高い三和町の大身地区という地域です。子供の頃からおいしいブドウを食べて育ちました。けれども、三和町の生産者も高齢化が進み、産地がだんだんと縮小しています。そこで、代表取締役の横田幸則が、出身地のブドウの伝統を残すため、横田石材の農業事業部として2014年に農園を立ち上げました。」

たしかに福知山市でブドウといえば、まず真っ先に名前が挙がるのが三和町である。もともと、昭和50年代にブドウの苗木が植えられ、徐々に産地が形成され、ブドウと言えば三和町というブランドが確立。一粒が6~8グラムにもなる大粒のマスカットベリーAは、糖度が20度以上に達する。夏のシーズンになると、三和町のブドウを購入しようという人達で販売施設が賑わう光景が、いまでもみられる。

しかし、三和町大身地区の生産者も徐々に高齢化が進み、現在では8軒前後となっている。この状況をなんとかしようと立ち上がったのが、丹波ほっこり農園なのである。大身地区の農園に足を運ぶと、豊かなみどりの中、旺盛な樹勢ですずなりにブドウの房が垂れ下がるブドウ園が拡がっていた。

「2014年の参入時にブドウの樹を思い切って植え替え、現在は120本程度が実をつけています。品種はマスカットベリーAが主軸ですが、シャインマスカットや藤稔、ナガノパープルなどの新品種も植えています。」

嬉々として農場内を案内してくれる田邉祐二さんは、福知山の出身だが、大阪でIT関連の仕事をしていた。しかし、もの作りである農業に関心が湧き、Uターンしてきた。丹波ほっこり農園にはもう一人、京都から農業をしたくてIターン、つまり移住してきた若者もいるという。横田石材の取組によって、三和町のブドウ生産がにわかに若返っているのかもしれない。

「ブドウ、どうぞ食べてください!」と、しっかりと色づいたマスカットベリーAをいただく。ムスク香と呼ばれる特有の濃い香り、そして爽やかさのある強い甘味が心地よい。

「綺麗な姿形で穫れた生果は、ほぼすべてを弊社の直売施設で販売しきってしまいます。ただ、どうしても脱粒といって、ポロポロと房から外れてしまう実が多く出ます。そうした実を有効活用するための手法として、ほしぶどうを考えたのです。」

なるほど、最初からほしぶどうを狙ったわけではなく、脱粒した実にどのように付加価値をつけるかということから発想されたわけだ。

ブドウの生の実をほしぶどうに加工するのは、横田石材の施設である「メモリアルガーデン三和」内にある厨房設備だ。

「ほしぶどうを製造する際、一般的には天日干しにするなどの方法があるのですが、うちではスチームコンベクションオーブンを用いて加温し、乾燥させます。独自に研究を重ねた温度と時間で乾燥させて、ドライとセミドライの二種類を製造しています。この、オーブンで水分を絶妙に残しながら乾燥させる方法だからこそ、うちのほしぶどうの味わいができているのだと思います。」

たしかに、丹波ほっこり農園のほしぶどうは、天日干ししたものに比べクセがない。また、皮に水分が残っているため、ゴワッとした硬さもなく、シットリしているので高級感があって食べやすい。

この絶妙な加減のほしぶどうが、品種にもよるが一房分で1000円からという値段は安すぎるのではないかと感じたのが、審査員の溝口康氏(ネイビーコンサルティング代表取締役)だ。地域商品の開発に詳しい溝口氏からすると「もう少し量を減らして価格を上げると、バランスがよくなる」と言う。

ただ、横田さんは「これでいい」と思っているようだ。

「私たちの会社は、広告宣伝費をほぼかけていません。そんなことにお金をかけるより、農業事業部に投資していくことで、地域貢献をしていきたい。そう考えたときに、圧倒的においしいほしぶどうを、今の言葉でいえばバズらせることができたら、地域に人がたくさん来てくれるようになる。そう考えると、いまはこの価格でいいかな、と思っています。」

横田さんは、三和町のブドウという一つのブランドのあり方にも一石を投じようとしている。

「僕らは、三和ブドウという呼び方だけではなく、今後は『丹波ぶどう』という独自ブランドとして広めていきたいと思っています。三和町の大身地区は、昔から『丹波大身』と呼ばれています。これまで丹波を冠したブドウは聞いたことがありません。そんなブランドを創っていきたいですね。」

横田さん、そして田邉さんの明るく、キラキラした眼を観ていると、三和町に新しい、爽やかな風が吹いていると思えてしまう。名高い三和町のブドウが、また違った装いになる日は、そう遠くないはずである。

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