はじめてコロッケふくちやま福祉会第2ふくちやま作業所
はじめてコロッケは、ジャガイモやタマネギを栽培して収穫し、それを潰して丸め、衣をつけて揚げるところまですべてを手造りで行う、とてもおいしいコロッケ製品だ。巷で格安で売られているコロッケの多くが、同じ大きさ・厚みになるよう型枠に入れて作られ、各種の調味料や添加物によって味わいが作られている。だから当たり前のことだが、売られているコロッケの多くが、家庭で作った味とは違う味わいがするものだ。
ところが、はじめてコロッケを食べると、とても高水準な味わいであるにも関わらず、遠い昔に母親が作ってくれたコロッケのような、ホッとして食べることのできる味わいがある。第2回のエエもん審査会で、揚げたてのコロッケを食べた審査員一同がうなずいたポイントが「余計なことを一切していない味わい」だということ。実際に、どんな人達がどんな工程で製造しているのだろうかと、足を運んでみた。
ふくちやま福祉会は、障害を持つ人達が安心して働き、暮らし続けることができる地域社会を創り出すことを目的に建てられた法人だ。物作りや教育施設、レストランなど、様々な障害を持つ人が、それぞれの特性に合った学びや働き方ができる場を作り、運営している。
福知山に住む人なら、市民交流プラザふくちやま内にある「森カフェ」や、天津地区にある「あまづキッチン」がその場だといえば「あ、行ったことある!」となるのではないだろうか。実は取材日の昼食を、あまづキッチンでいただいたのだが、とてもおいしく、また温かなサービスを受けて、一気にファンになってしまった。
第2ふくちやま作業所は、そのあまづキッチンの裏手の坂を上っていったところにある、農業と食品製造を行う施設である。
作業所は農業部門と製造部門に分かれており、農業部門では利用者が6名、施設の職員が3名の計9名で、畑での農産物栽培を行っている。作業所から車でほど近い彼らの畑に行くと、素敵な空間が拡がっていた。
農園は3枚の畑から成っており、合わせるとおよそ35アール。そこで季節ごとにさまざまな作物を栽培している。
主力作物はもちろん、はじめてコロッケの主原料であるジャガイモだ。品種はポテトサラダやコロッケに向く「はるか」。白い肉質で、貯蔵すると甘さが増す、おいしい品種だ。数年前までは、自分達で栽培したジャガイモだけでは間に合わず、市内の生産者のジャガイモを分けてもらっていたそうだが、ここ数年は自分達の栽培だけでまかなうことができているという。
(写真提供:第2ふくちやま作業所)
また、驚いたことに主原料であるジャガイモだけではなく、タマネギとニンニクの栽培も手がけている。
「この畑では、鶏糞と油かす、ぬかと籾殻、ボカシ肥料に草木灰など、いわゆる有機質肥料で土作りをしています。」(職員の桐村伸介さん)
有機質肥料での栽培に加え、農薬も最低限度しか使わない。作物によっては農薬を一切使用しないものもある。
そうした栽培方法で原料としてのジャガイモを生産していることが、はじめてコロッケの味わいがよい理由にもつながっているのかもしれない。というより、自前で栽培したジャガイモで作るコロッケを販売するということは、よく考えてみれば事例としては珍しいことである。
このような素晴らしい福知山の土壌で栽培した原料を、また自分達でコロッケに製造する。
製造部門は、利用者が2名に、職員が1名という最低限の人数で、全ての行程を手造りで行っている。自宅でコロッケを一から作ったことのある人ならわかるだろうが、コロッケづくりは工程が多く、とても大変な料理だ。
「ジャガイモは蒸かして、下味をつけて一晩おいたものに、ひき肉などの具材と混ぜて味付けをして、衣をつけて揚げます。コロッケが揚がったら、すぐに瞬間冷凍にかけるので、おいしさが逃げないんですよ。ずっと買ってくれている人からも『家で揚げるよりもおいしいわ』と言われるんですよ。」(職員の藤本倫子さん)
じつはこのはじめてコロッケ、コロナ禍以前は市内各所で行われる催事に出店し、対面販売を行うことが多かった。揚げたてのコロッケには行列ができ、リピーターも来るほどの人気だったそうだ。
しかし、コロナ禍によって催事販売の場となるイベントが極端に減ってしまった。一時はどうなることかと危ぶまれたそうだが、通信販売やテイクアウト販売を行う方向に切り替えた。
さまざまな工夫もしている。以前から、揚げたてを販売するだけではなく、衣漬けした状態の冷凍販売もしていた。それに加えて、先に書いたような、揚げたコロッケを瞬間冷凍し、利用者が家で油を使って揚げる必要のない形態の商品も販売し始めたのである。
この工夫によって販売しやすくなり、生産の見込み数量よりも販売量の方が多い事態、つまり大人気でものが足りないという状態になってきているそうだ。はじめてコロッケのおいしさが、福知山市内の企業や団体に知れ渡り、注文が来るようになったという。
ちなみに、はじめてコロッケにはいくつかバージョンが存在する。本記事で紹介しているのは、ジャガイモ、タマネギ、ひき肉を合わせたプレーン。これに加えてカレー味のコロッケ、そして季節によってできる野菜、例えば春先には柔らかなニラを刻んで混ぜたコロッケがお目見えする。これがとてもおいしいそうで、人気を呼んでいる。筆者もまだニラ入りコロッケは食べたことがなく、もしどこかでみかけたらマストバイだと思っている。
はじめてコロッケは、福知山で栽培されたジャガイモやタマネギ、ニンニクなどの原料を、生産者自身が一気通貫でおいしいコロッケ製品に仕上げた稀有な商品である。直売施設やスーパー、各種の催事売場、そしてオンラインの通販でも購入することができる。ぜひその温かで丁寧なおいしさを味わっていただきたい。
■オンライン販売Webページ
https://dai2fukuchi.handcrafted.jp/